担当 / 代表取締役 平井 伸幸
いつも、お取引先美容室に訪問させていただいておりますが、事業継承の相談が多くなっています。先日も愛媛と山形と大阪で相談に乗ってまいりました。 今回はその中でも相談の多い、「従業員への事業継承」をとりあげます。 |
■ すすまぬ事業継承の実態
日経新聞の調査によると、中小企業の経営者の中心年齢は
1995年・・・47歳
2015年・・・66歳
ということです。この20年間で、事業継承がすすまず、経営者が年老いてきている実態がわかります。
全国の中小企業350万社のうち、今後20年間で「後継者が不在」が理由で127万社が廃業に追い込まれると言われています。
また、中小企業庁の資料によると、かつて20年前は、親族(子供や妻・兄弟など)への事業継承が90%以上でした。近年ではこの割合が50%になっています。
変わりに増加しているのが、①従業員への継承と、②社外の第三者 です。
〇(以前のブログ)
美容室の同族経営、子供への事業承継 はこちら
■ 従業員への継承 メリット・デメリット
自分自身も、先代と血縁がなく、①の従業員への継承 を経験しました。
一般的に、従業員・役員が事業継承する場合
<メリット>
・親族内に適任者がいない場合の最有力な選択肢
・業務に精通しているため、社員の理解を得やすい
<デメリット>
・親族内承継と比較して、関係者から心情的に受け入れられにくい
・後継者候補に株式取得の資金力がない場合が多い
・個人債務保証の引き継ぎ等の問題
といわれます。もう少し掘り下げて3つのポイントで整理してみます。
■ 従業員への継承のポイント
① 経営者・後継者のパーソナリティに関すること
-1 主従関係の克服
血縁がない第3者同士のため、デリケートな継承の話は、お互いの遠慮があり、なかなかしにくいものです。社外の専門家・第3者の協力者を頼りながら、事業継承計画を“書面”で作成し、考えを共有することが重要です。
-2 後継者の覚悟
子供とは違い、もともと従業員ですので、経営者になることへの覚悟がまずとれません。相当な時間も必要になります。
-3 後継者の育成 理念の継承
後継者の育成は、経営者にしかできません。もちろん社外研修などを有効活用することもできますが、会社の理念・強みを後継者に継承していくために、経営者と後継者の間で、深い信頼関係、共同での仕事、時間の共有が必要です。
従業員として優秀なのと、経営者として優秀ということは、まったく別物なので注意です。
② お金に関すること
-1 株式の分配
社長という役職だけ継承しても全く意味がありません。株式の移転が終わらない限り事業継承が完結しません。
従業員では、株式を買い取る資金的余裕がない場合がほとんどです。親族ではないので、相続もできないため売買になります。
時間的な余裕があれば、少しずつ後継者に分配していく(=贈与)事ができます。また、すでに株式が分散してしまっている場合、後継者ひとりに集約しなければいけません。
-2 個人保証の処理
負債がある場合、ほとんどのケースで経営者の連帯保証がついています。事業継承のタイミングで、その個人保証が後継者についてしまいます。負債の圧縮、個人保証を外すなど事前からの取り扱いが必要です
-3 ガラス張り経営
中小企業では、会社と個人の資産が明確に線引きできていない場合が多いと思います。
事前から、個人と法人の財布の切り分け、決算書をガラス張りにして明快にする、また後継者と共有していくことが必要です。
不明瞭なままでは、後継者がこわくて、とても継承できません。
③ 人に関すること
-1 スタッフの理解
美容室ですから、一番重要な資産は、社員です。後継者が社員から理解・協力してもらえる人物でなければいけません。
-2 次世代幹部つくり
後継者が右腕をつくる。中小ではワンマンの場合がほとんどです。それを後継者を中心とした次世代型組織に切り替えることが必要です。
またワンマンに頼らない「売上をあげる仕組み」をつくるべきです。(ここは、レボルが得意とするところです)
古参の幹部に理解・協力してもらえるのか、その処理も経営者の仕事です。
いろいろ書籍を買ったりセミナーに行ったり、勉強しましたが、実際に取り組むと、教科書どおり進まないことがほとんどです。
多くの専門家の方のアドバイスを受け、7年ほどの時間をかけて取り組みました。
自分の経験より
・時間的に余裕があるうち(できれば10年)から計画的にすすめる
・外部の専門家・パートナーの支援をえる
先伸ばしせず、取り組むことが重要です。